観音寺歌仙「旧庵を」の巻
令和5年6 月1 日起首 6 月14日満尾
①旧庵をひそかに訪へば新樹伸ぶ 雅舟
② 実梅のかほり濃き五月闇 量子
③手さぐりに言の葉集めとりあへず のぶ子
④ 大雨警報そぼ濡る青葉 るみこ
➄まろき湯の帰りの月は眉引きか 美子
⑥ 妻を慕ひてさを鹿の鳴く 初美
⑦茜雲千々にものこそ思はるれ 仁史
⑧ 会話のはずむ週末の午後 睦子
⑨恋しくば千里の道を越えゆかむ 静風
➉ 雲外蒼天途果てなくも 啓子
⑪回天は海上特攻不帰の客 雅舟
⑫ 父を外地で亡くせし子ども 量子
⑬寒月の兎の耳や凍るらむ のぶ子
⑭ せめて貸したき古家の軒 万紀子
⑮雀子の黄なるくちばしいはけなく るみ子
⑯ 七冠なりてその先夢む 美子
⑰花の雲見上げて上るつづら折り 初美
⑱ 峰にも尾にも春は来にけり 仁史
⑲軒先に床几置きたり遍路路 睦子
⑳ GPSに導かれ行く 啓子
21一夜庵貧者の一灯真輝く 雅舟
22 いろり囲みて居恋の夜更く 量子
23団扇おく幼子ははや寝息たて のぶ子
24 蚊遣りの煙高く上りて るみこ
25大空を独り占めする花火の輪 静風
26 マスクはずして広がる笑顔 美子
27同窓会あちらこちらで焼けぼっくい 万紀子
28 胸のアルバムアップデートす 初美
29朝ぼらけ有明浜の月見れば 仁史
30 ただ爽やかにあり屈託もなし 啓子
31赤とんぼ枯れ蓮葉に停まりけり 静風
32 水の中ではメダカの産卵 万紀子
33飼い主の責任重しミドリガメ 睦子
34 孫の守りして父母の身思ふ 美子
35をだまきの頭を垂れて人を恋ふ 量子
36 青雲にほふ永遠の春 雅舟