古今「しぐれ」名歌 10首
かむなづき時雨の常かわが背子が屋戸のもみぢ葉散りぬべく見ゆ 大伴家持
今はとて我が身時雨にふりぬれば言の葉さへに移ろひにけり 小野小町
時雨つる真屋の軒端のほどなきにやがてさし入る月のかげかな 藤原定家
わが恋は松を時雨の染めかねて真葛が原に風さわぐなり 慈 円
月を待つ高嶺の雲は晴れにけり心あるべき初時雨かな 西 行
世に経るは苦しきものを槙の屋にやすくも過ぐる初時雨かな 二条院讃岐
初しぐれ過ぎたるのちのさざんくわのありとしもなく含むくれなゐ 河野裕子
ゆふされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも 斎藤茂吉
とほどほに波寄る浜は恋ほしくて風に流らふしぐれの雨は 芝生田実
さむざむと沖あひ暗みしぐるるをわれはなぎさの砂づたひつつ 前川佐美雄