万葉の花(10首選)

もののふの八十少女らが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花   大伴家持

春の野にすみれ採みに来しわれそ野をなしかしみ一夜寝にける 山部赤人

巨勢山のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野を  春野蔵首老

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女        大伴家持

恋しけば形見にせむとわが屋戸に植ゑし藤波いま咲きにけり  山部赤人

朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ   作者未詳

み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも    柿本人麻呂

紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも    天武天皇

路の辺の壹師の花のいちしろく人皆知りぬわが恋妻を     柿本人麻呂

道の辺の尾花がしたの思ひ草今さらになど物か思はむ     作者未詳