菊鶏頭切り尽しけり御命講 しきびあげたれば済ませるお会式
菊に出でて奈良と難波は宵月夜 会ふ人毎にかすかなる笑み
菊の香にくらがり登る節句かな はじかみ入れて菊酒を飲む
菊の香や奈良には古き仏たち 据ゑ置くだけの粋な計らひ
菊の香や奈良は幾世の男ぶり イケメン業平垣間見る人
菊の香や庭に切れたる靴の底 陶淵明の垢煎じ飲む
菊の露落ちて拾へば零余子かな 珠芽を食べれば長寿を保つ
菊の後大根の外更になし 役者不足を補ふ人参
菊の花咲くや石屋の石の間 舗装の割れ目にも咲く野菊
寒菊や粉糠のかかる臼の端 芭蕉の目指す軽みの極致