「たらちねの母」短歌抄

たらちねの母が呼ぶ名を申さめど道行く人を誰と知りてか『万葉集

死に近き母に添い寝のしんしんと『赤光』斎藤茂吉 

のど赤き玄鳥二つ垂乳根の母の死『赤光』斎藤茂吉

母が釣りたる青蚊帳をすがしといねつ『長塚節歌集』

病む母の心おろかになりぬらし『海山のあひだ』釈迢空

子を負える埴輪のおんなあたたかしかくおろかにて『山河無限』山田あき

戦争未亡人子育てのつとめ果たしてそそくさと逝く『母恋星』剣持雅舟

女丈夫新体操の名付け親磯野先生『たらちね日記』芦原すなお