

京極大政大臣中納言と申しけるをり菊をばおびただしきほどにしたてて、鳥羽院にまゐらせ給ひたりけり。鳥羽の南殿の東面の坪に、ところなきほどに植ゑさせ給ひたりけり。公重の少将、人々すすめて菊もてなされけるに、加はるべきよしありければ、
君が住む宿のつぼをば菊ぞかざる ひじりのみやといふべかるらむ
(『山家集』上秋 510)
君が住む宿のつぼをば菊ぞかざる ひじりのみやといふべかるらむ
(『山家集』上秋 510)
〔訳〕 君(鳥羽院)の住んでおられる宿の庭を菊一ぱいにかざる。これは聖(仙)の住んでいる宮(仙洞御所)と言うのがふさわしいことだ。