平成万葉歌仙(三十六)「春なれや」の巻  両吟

   平成万葉歌仙(三十六)「春なれや」の巻  両吟     宣長  不遜(捌)
        起首 2010/3/1(日)
        満尾 2010/3/10(水)
 大和(やまと)には 群山(むらやま)あれど とりよろふ 天(あめ)の香具山 登り立ち 
 国見をすれば 国原(くにはら)は 煙(けぶり)立ち立つ 海原(うなはら)は 鴎(かまめ)
 立ち立つ 美(うま)し国ぞ 蜻蛉島(あきつしま) 大和(やまと)の国は(万1-2)舒明天皇

  発句 春なれや国原海原美(うま)し国        不遜
  脇   霞たなびき映ゆる言霊             宣長
  第三 懽(よろこび)の「なりにけるかも」麗らかに  不
  四   醜の御楯と健気に生くる             宣
  五  東(ひがし)野の月を背にして歌人立つ    不 月
  六   采女の袖を吹く秋の風             宣
  ウ
  一  群竹の虫の時雨の夕べかも           不        
  二   餓鬼に額づくむなしきは恋           宣 恋
  三  飲む水に妻の影見る忘(わす)られず     不 恋
  四   志賀の大わだただ波の音           宣
  五  何ものにまさるは子供宝なり          不
  六   世の中空し挽歌は哀し             宣
  七  老鶯や忘れかねつる父母のこと        不
  八   月の香具山夏の羽衣              宣 月
  九  土用丑ここらあたりは鰻の匂い         不  
  十   新しき靴履ける防人               宣
  十一 見渡せば古里の野辺花の降る         不 花        
  十二  春設け鴫のしばしばに鳴く            宣
  ナオ  
  一  青柳の都大路のにぎにぎし           宣
  二   濁れる酒を讃むる麗日             不
  三  万代に語り告ぐべきマイネーム         宣
  四   山柿の門の謎に迫りぬ             不
  五  時じくぞ不尽高嶺に雪は降る          宣
  六   旅の飯(いひ)をば盛る枯れ柏         不
  七  斃れたる人憐れめる聖太子           宣
  八   蔭でひそかに君がサインす          不 恋
  九  相共に触れし室の木変わらぬに        宣 恋
  十   繁きの恋の胸疼く日々             不 恋   
  十一 月待てば潮も心も適ひけり           宣 月
  十二  夕波蜻蛉(あきつ)いにしへ思ほゆ      不
  ナウ
  一   指折りて秋の七草ただ眺め           宣
  二    子が泣けばそれその母もまた        不
  三  森閑と千鳥鳴く音の夜もすがら         宣
  四    ロマン秘めたるあしびきの山         不
  五  咲く花は過ぎ去りゆけど歌は永久(とわ)    宣
  挙句   若葉萌え立ついや重(し)け吉事(よごと) 不