川面に春の光りはまぶしく溢れ。そよ風が吹けば光りたちの鬼ごつこ葦の葉のささやき。行行子(よしきり)は鳴く。行行子の舌にも春のひかり。
土堤の下のうま ごやしの原に。自分の顔は両掌のなかに。ふりそそぐ春の光りに却つて物憂く。眺めてゐた。
少女たちはうまごやしの花を摘んでは巧みな手さばきで花環をつくる。それをなわにして縄跳びをする。花環が円を描くとそのなかに富士がはひる。その度に富士は近づき。とほくに坐る。
耳には行行子。頬にはひかり。
ギョギョシ、ギョギョシ⋯⋯よく見ると、ヨシキリ(行行子)が数羽。唐黍畑に鳴きながら飛んでいるのが見えました。半世紀前小豆島の高校でこの詩を生徒と共に朗読したのを思い出しました。