耳にはよしきり(行行子)、頬には光り

  60年前、高校一年生現代国語の教科書に出ていた下の詩を思い出しました。
 今、外ではギョウギョウシ、ギョウギョウシとせわしなくヨシキリが鳴いてます。
 
     富士山      草野心草

 川面(かわづら)に春の光はまぶしく溢れ
 そよ風が吹けば光たちの鬼ごっこ
 葦の葉のささやき 葦の葉のささやき
 行行子(よしきり)は鳴く
 行行子の舌にも春のひかり
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  土堤(どてい)の下のうまごやしの原に
 自分の顔は両掌のなかに
 ふりそそぐ春の光に
 却って物憂く眺めていた
 ふりそそぐ春の光に
 却って物憂く眺めていた
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 少女たちはうまごやしの花を摘んでは
 巧みな手さばきで花環をつくる
 それをなはにして縄跳びをする
 花環が圓を描くとそのなかに富士がはひる
 その度に富士は近づき とほくに座る

  耳には行行子
  頬にはひかり
 
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