大塚布見子歌集抄

 大塚布美子(本名、文子) 昭和4年~令和2年 香川県観音寺市柞田町出身 女流歌人 歌誌「サキクサ」創刊、主宰 『大塚布見子選集』(短歌新聞社)全13巻 個人歌集18巻

  歌集5冊①②③④➄

①第1歌集『白き假名文字』サキクサ叢書第一篇 小暗きに降りくる雪は天よりの白き假名文字とめどもあらず(巻頭歌)を初め雪の歌にちなむ 四季の章 招魂の章 古都の章「丘いくつゆき回む径の明日香野やめぐりめぐりてあくがれやまず」まで450首を掲載。自然詠生活詠共に写生感覚鋭く洗練されている。昭和サキクサ短歌会 昭和58年刊

②第3歌集『霜月祭』サキクサ叢書第4信州の篇 山里に伝わる神呼びの霜月祭に魂の原郷を感じる 風の章、光の章、祭の章 一夜庵海は見えずて町の見ゆ宗鑑法師人恋ひけらし あけ放ち花活け茶を点て大人待たむあの世の用終へとく帰りませ 短歌新聞社 昭和60年刊

③第4歌集 『大塚布見子歌集』日本現代歌人叢書 第12 集  既刊3歌集より自選の391 首を載せる。萌え出でし欅若葉のゆるるさへ君思はしむすでにまさぬを 稚きいとけなきものらの眠り白昼を仔猫三匹死したるごとき 母父夫を逝かしめて生きゆく歌々が心に響く。ふるさとに「繭ごもりゐるわれ」と歌う。芸風書院 昭和60年刊

④第10歌集『夢見草』 現代女流短歌全集21  さきがけの花の章 山百合の章 春が来ると、千葉に咲く桜の花を夫と一期一会の思いに訪ねてゆくのが習いになっている」夢見草は桜の別称 見え初めしさくらの蕾の薄紅のその寂ぶるいろ古代の色や 玉藻よし讃岐をみなの黒髪をあたら埋みし地震を憎めり 短歌新聞社 平成8年刊

➄第11歌集『四国一華』 サキクサ叢書第65篇 菜のはなの章 明けの星の章 四国詠草多し 「短歌の運命は孤高を保って、清冽にいさぎよく」「日本の歌の心は、もともと相聞えにある」ここに生れここに育ちし形見とて夫が歌碑建つお婉堂の庭 短歌新聞社 平成9年刊