オリーブは青き音符の実を揺らせ結ばれ難き愛の譜を練る
連翹の島の教へ子つつがなしやその大方は便りも途絶え
風となり君を訪はんかさてはまた矢車草のみ吹きて過ぎんか
そよ風のそよろそよろと吹き来れば優しかりつる人想ひ出づ
六千万年宇宙さまよひ落ち来たる隕石のごとく君を想はむ
晴れやらぬ心の空に飛ぶ蝶のたどたどしさを君かと思ふ
若人の幾千人に接し来て若返り来し己に驚く
文学青年教師と言はれし時に会うひたかりしそんな可愛いい子らに囲まる
三倍の動詞人生送らんと心はいつも青春の中
人触りよき愛といふことばにて身を鎧ひ来し貧しき心
平成10 年刊剣持雅澄著『歌集・惜春賦100首』より