惜春譜10首
風となり君を訪はんかさてはまた矢車草のみ吹きて過ぎんか
脆弱の世を射るごとくフェニックスは鋭き葉先虚空に曝す
自らの言葉磨いてゆく中に新しき生拓かれてゆく
三倍の動詞人生送らんと心はいつも青春の中
来ぬ人を待つその時も花は散る西行遠忌弘川寺に
朔風の起ころ北辺目指し征きし父の二倍の齢生きたり
少年は母と二人で帰りたり菜の花畑おぼろ夜の道
母嫁せし時のタンスは納屋隅に雪降るごとき閑けさをもつ
俳諧の風景に立つ一夜庵仮の宿りはかくてあるべし
オリーブは青き音符の実を揺らせ結ばれ難き愛の譜を練る