「旅人と我が名呼ばれん初時雨」室本芭蕉句碑

  旅人と我が名呼ばれん初時雨  芭蕉

  この句碑は香川県に三基あるその一つである。観音寺市室本町新田にある芭蕉句碑は、明治12年建立された。庵前には藤棚、庵後には松林があり、風雅な地であったことが記され、庵主原梧雄が中心になってこの句碑を建てたいきさつが刻まれている。

明治10年頃丹後の国の俳人でここが気に入って住みつき、俳弟子たちと建てた句碑。その裏に刻まれた句。

  傘持たぬ仕合せもあり初時雨   梧雄(原)

  呼ぶ人も呼ばるゝ人も時雨哉        江甫(宮武半六)

  気をせいてここまで濡れつ初時雨 松里(小林章七)

  行き違ふ間を時雨るゝや雲と雲     松濤(三谷広治)

  常の雨今日は時雨の庵かな            半起(三角弥吉)

  今立った烟は初時雨                        山居(宮武善作)

  濡れて来て嬉しげに言ふ時雨かな  帰来(安倍佳七)

  時雨るゝや気に年寄せて戻る道      直外 並  書

 室本新田公民館の中には「松風庵」(禅宗系の仏壇)が大切に祀られ、室本地域の当番制で看経がなされている。