「多情」の小説

『多情多恨』尾崎紅葉の小説 

 人付き合いの少ない鷲見柳之助にとって、妻は命でもあった。その妻を亡くすと、彼は最初ひどく嫌いであった友人の妻が夫の世話を焼く姿に惹かれるようになる。物事に感じ易く、心に悩みの絶えない運命にあった。

『多情仏心』里見惇の小説
 主人公藤代信之が,五年足らずの間に多くの女性との恋愛遍歴を描く。それらの女性にとりかこまれながら,大満足でその生を終える物語である。光源氏ような恋愛絵巻であるが,それぞれの女性の恋愛に賭ける心理はよく描かれている。気が移りやすいが薄情なことができない(仏心の)性格であった。
 一般に「多情」とは、情愛が深く、感じ易いこ。「多情な人」とは異性に対して移り気なことで、世間的にはマイナスイメージはあるが、小説物語には「純情」一途では面白くない。

「小町の芍薬岡本かの子の小説の中に「多情多感」で天才型のこの学者は魅惑を覚えるものを何でも《溺愛》する性質であつた。対象に向つて恋愛に近い気持ちで突き進むのであつた。

 サテ、アナタニ《溺愛》癖ハアリマセヌカ?「同病相憐れむ」ノデアレバ、イツカドコカデ⋯