「野菜」俳句 100句

 ~春の野菜~

日永さに春菊摘まんなど思ふ     原 石鼎

しをらしや細茎赤きほうれん草    村上鬼城

水菜採る畔の十字に朝日満ち     飯田龍太

蕗の薹岩間の土にひきしまる     西東三鬼

丘に来て風の動かす蕨摘む      秋元不死男

にんにくを噛みつつ粥の熱き吸ふ   長谷川素逝

韮召さぬ神々には韮を供へざる    山口誓子

三葉芹摘みその白き根を揃ふ     加倉井秋を

やうやうに掘れし芽独活の薫るなり  杉田久女

茹でてゐるアスパラガスの丈長し   草間時彦

万葉の沙弥の浜ちしゃを摘みて来し  安藤老蕗

エプロンに摘み鶯菜鮮けし      高橋東一

しなしなとして春大根の買はれけり  秋元不死男

茗荷竹遠の水田のてらてらす     森 澄雄

慈姑掘る門田深きに腰漬けて     石塚友二

山葵田の水音しげき四月かな     渡辺水巴

大根の花と頷きあひて過ぐ      波多野爽波

そら豆の花の黒き目数知れず     中村草田男

蔬菜園朝虹たちて花いちご      飯田蛇笏

葱坊主犇めき合って皆太し      川端茅舎

 ~夏の野菜~

青春の過ぎにしこころ苺喰ふ     水原秋櫻子

背のびしてささえ木おさえ豌豆もぐ  星野立子

豌豆のみのるにつけて葉のあはれ   高浜虚子

甘藍の青帆幾千霧にほふ       堀口星眠

つとめ妻玉葱にすぐ涙ぐむ      品川鈴子

あらはれて流るる蕗の広葉かな    高野素十

雨ごもり筍飯を夜は炊けよ      水原秋櫻子

夕づきて夜なかなか茄子の花     石塚友二

亀虫胡瓜の花を半分に       高野素十

川音と土手を隔てて花西瓜      橋本花風

教師やめむ地上の南瓜花盛り     平畑静塔

じゃがたらの花に北見の国雲る    森田 峠

岬へと向ふさがりに藷を挿す     森田 峠

大根おろしの何といふ辛さ     木内玲子

夏葱に鶏裂くや山の宿        正岡子規

肩に鍬辣韭提げて立ってをり     高浜虚子

夕月のいろの香を出す青胡瓜     飯田龍太

白瓜や食慾さへ子規に若かざりき   石田波郷

メロン切る意志と決断距離ありて   加藤楸邨

夕立が洗つていつた茄子をもぐ    種田山頭火

処女の頬にほふがごとし熟トマト   杉田久女

紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ     飯田蛇笏

名月や梅酢に漬けし茗荷の子     草間時彦

 ~秋の野菜~

子を連れて来て寝かせたり西瓜番   合田丁字路

とって来て南瓜になほも夕茜     山口青邨

摘み摘みて隠元いまは竹の先     杉田久女

ささげこぼれ海の小石にまぎれたる  沢木欣一

藤豆の咲きのぼりゆく煙出し     高野素十

刀豆の鋭きそりに澄む日かな     川端茅舎

畦豆に鼬の遊ぶ夕べかな       村上鬼城

唐辛子風のほむらとなり反れる    宇咲冬男

花一つもちて枯れいる茄子かな    高野素十

時化過ぎぬ玉蜀黍もさも疲れ     富安風生

大根蒔く日より鴉を憎みけり     河東碧梧桐

沖縄の壺よりれいしもろく裂け    長谷川かな女

おしろいのまだらになりし冬瓜かな  富安風生

梅雨深し煮返すものに生姜の香    草間時彦

人知れぬ花いとなめる茗荷かな    日野草城

もう種でなくまつさをに貝割菜    永田耕衣

間引きたる畑顧みて佇みぬ      高浜虚子

甘蔗植えて島人灼くる雲にめげず   大野林火

幸福の靴首にかけ馬鈴薯を掘る    山口青邨

芋の葉の八方向ける日の出かな    石田波郷

狐ききをり自然薯掘のひとり言    森 澄雄

長芋を掘るや鋤鍬使ひ分け      永松西瓜

ほろほろとぬかごこぼるる垣根かな  正岡子規

落花生喰ひつつ読むや罪と罰     高浜虚子

穴さむく土音のして牛蒡掘る     飯田蛇笏

 ~冬の野菜~ 

畑大根皆肩出して月浴びぬ      川端茅舎

沢庵や家の掟の塩加減        高浜虚子

切干のむしろを展べて雲遠し     富安風生

蕪の大なるを曳けば痩せたる蕪哉   徳田秋声

白菜の山に身を入れ目で数ふ     中村汀女

しみじみと日のさしぬける冬菜かな  久保田万太郎

折鶴のごとくに葱の凍てたるよ    加倉井秋を

これよりの炎ゆる百日セロリ噛む   野沢節子

青年来る人参冷えたるアパートに   藤田湘子

幸福に眺めて玻璃の冬苺       富安風生

蓮根掘モーゼの杖を掴み出す     鷹羽狩行