ふるさとの海〈姫浜〉桜貝ひとつ

姫浜⋯玉藻よし讃岐の国の西の涯

瀬戸内海のど真ん中⋯広がる燧灘

大き過ぎて向うが見えない

ここは遠浅の豊浜姫浜

潮引けば波打ち際まで百米沖に

誰も来ない大砂浜

故里人は遠き日の思い出が蘇る

愛しい人と来たこともあれば

歌のひとつも詠まれるはずの浜辺

 

今夕はなぜか水平線上がくっきりと

明るく薄紅色に映えて

対岸尾道の島々が鮮やかに

浮島現象を見せる瀬戸の奇景

紹介するにカメラの故障

ただ拙い詩句によりかかる

 

はぐれ鷗もどこかへ飛び去った

いつかあなたと来た淡い思い出の

この遠浅の砂浜を立ち去ろうとして

足元に見つけた桜貝

誰にも見つかることなく

私にだけ拾われんとして

この大きな砂浜で今日まで待っていた

 

桜貝ひとつ⋯今は机上につくねんと

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