読むことで書き直す

『小説の読み書き』佐藤正午
 
 この人独特の言い回しが面白い。「文章を書くとき、人は書き直すという意味でその言葉を使っている」すなわち「推敲」ということになるのだろう。そして、読者が「読むことによってさらに小説は書き直される」とも述べている。こういう表現にはハッと驚かされる。「小説は読者が自分なりに読み加えても、読み捨ててもいい、表現者のつもりで主体的に読めばいい」と言ってくれているのだろう。本書に取りあげた名作『雪国』『暗夜行路』なども自分なりの読み直しがなされている。