白峰と歌の求道者

西行』目崎徳衛
 
西行の思想史的研究』の著者が、一般読者のために平易に興味深く紹介した伝記である。佐藤義清の公私生活、遁世の理由、数寄の種々相、仏道修行者として(讃岐への修行を特別視)、乱世の晩年、弘川寺の入滅、と実証的記述に心がけてはいる。ただ学術書離れしようとして悪戦苦闘しているところに好感が持てる。実像だけでなく没後の虚像も疎かにしない。西行追慕の旅が女性(後深草院二条)によって先鞭を付けられたことは、女性好きの西行のさだめし本懐とするところであろうと追記している。