円地源氏

『なまみこ物語・源氏物語私見円地文子
 
源氏物語』の現代語訳をしている著者の「源氏物語私見」が収載されている。「空蝉の顔かたち」「夕顔と遊女性」「紫の上のヒロイン性」等平易に書かれているが、「六条御息所考」は綿密に考察されている。一般に、仏教的に見て、女の暗い業の典型と見下げられているが、巫女的な能力を光源氏に及ぼしている六条御息所の存在は、全編を通じて不協和音になり、それがかえってこの物語のシンフォニーを完成しているとみなしているところが卓見である