地名アクセント

 
  地名の発音アクセントは実に大切だ。瀬戸内に浮かぶ島「粟島」を
〈アワ[高]・シマ[低]〉と語頭を高く発音されると、たまらない。平板型でないと、この島の感じがしない。
 地方に勤務したアナウンサーはその土地でどう発音しているか、いちはやく察知し、正しいその土地の訛りで発音し、早くその土地に慣れてほしい。東京中心の標準語一律アクセントに囚われないようにすべきである。
 「観音寺市」は「カンノンジシ」などではない。「カンオンジ」と平板に発音する。語頭を高く発音すれば、それはもうこの地名の実在感を失う。この土地の在来住民は「カオンジ」と約音の呼称を使う。「カオンジに行ってくる」と言う人が根っからの観音寺住民である。
 ことほどさように、その土地固有の発音アクセントはその土地の住民権である。役所に戸籍を移しただけで真の住民ではない。
 香川県の県庁所在地「高松市」はどうか。 「タカマツ」は「カ」が高い。ところが、在来の市民は〈タカ[低〕マツ[高]〉と語尾を高く発音する。そのような在来型で発音する人も少なくなっているかと思う。しかし、古高松住民の系譜を大切にするならば、「松」にアクセントがなければ、もはや本来の「高松」ではない。