わが命今日を限りの者ならば書きさしの本一気にまとめむ
我が遺産いくほどもなし兄弟の争うならばそれもよかろう
遺言をあれほど書いておくように言った教え子「それみたことか」と
いつまでも生きられるとは思わねど今日を限りの命なりけり
生前葬など馬鹿げたる世迷事とは思いつつ手遅れとなる
何事も遺言らしきこと言わずそれでも歌数無数書きおけり
三島太宰いずれの自死を選ぶにも荒唐無稽の範疇にあり
恨むなく潔き最期成し遂げて従容とゆく文したためて
こんな甘い言弄ぶ者にして事の成就はつゆありえない