2022-03-26 島崎藤村『若菜集』~春~ たれかおもはむ鶯(うぐひす)の涙もこほる冬の日に若き命は春の夜の花にうつろふ夢の間(ま)とあゝよしさらば美酒(うまざけ)にうたひあかさん春の夜を 梅のにほひにめぐりあふ春を思へばひとしれずからくれなゐのかほばせに流れてあつきなみだかなあゝよしさらば花影にうたひあかさん春の夜を わがみひとつもわすられておもひわづらふこゝろだに春のすがたをとめくればたもとににほふ梅の花あゝよしさらば琴(こと)の音(ね)にうたひあかさん春の夜を