俳諧『有明浜』一砂編

序 宗鑑法師一夜庵は、七宝山興昌寺の境内に結ひて置れし、老衰のありさまみつからきさみて、今も庵のあるしとなりぬ。志をはこひしともから、相続なさしめんため、諸国の俳士に自筆の短策を乞、あるひは科撤行脚の人のとふらひよりて、懐旧のこゝろを述しあり。凡一千余枚、旧草に残れり。  (興昌寺保存「筆海帖」)

 花にあかてたとへはいつまてゝも一夜庵  梅翁 (西山宗因、談林派創始者)

 まゝよ世は夏の一夜のかりの庵  季吟 (北村季吟芭蕉の師)

 いなれぬや雪を下客に一夜庵  鬼貫 (上島鬼貫、蕉門の俳人) 

 木像や槿すきのいち夜あん  三千風 (大淀三千風、紀行随筆家)