1 すずしろの水がしたたる冬の朝 雅博
2 暦の上で改まる年 雅澄
3 サッカーをする子らの声若やぎて 博
4 蛸の糸切れ虚空残さる 澄
5 鳶群れて柱となるや青の天 博
6 因幡の白兎丸裸となる 澄
7 寒風がガマの穂揺らす船入り江 博
9 粟島は世界へつなぐ大碇 博
10 漂着物の展示羽ばたく 澄
12 ころりコロナが世界席捲 澄
13 松の内明けるまで待つ政 博
14 似非休戦もあたふた露悪 澄
15 お松っあん寝た振り上手茶釜炊く 博
16 行方不明の恋しや狸公 澄
17無意識が本当の心導師言う 博
18 この石庭は賽河原か 博
19水仙は八重より一重孤に徹す 雅
20 実朝の歌読み月仰ぐ 博
21薫風の触れ合う刻を遁しけり 雅
22 緑陰求め日時計となる 博
23安閑と活断層の真上人 雅
24 天の計精妙の技 博
25町角に罪を許せの誓紙あり 雅
26 「告白」の意味今は「好きです」 博
27ほとほとと君かと思い夢覚める 雅
28 しんしん積れ真夜中の雪 博
29己が悪業埋め尽して雄飛せむ 雅
30 イカロスの空エーゲ波高し 博
31雌伏してルネッサンスの野心あり 雅
32 追い風あらばはた向い風 博
33紅薇夏来たりなば栄を過ぐ 雅
34 すずろに会ひてまどひたる朝 博
35行き先を語らず問わず夢中人 雅
36 雪踏み分けてみやび訪ねむ 博