俳祖山崎宗鑑の遺墨概説

平成24年度秋 香川県放送大学

   剣持雅澄担当 講演【演題】俳祖山崎宗鑑の遺墨

 【講演要旨】 

俳諧の始祖山崎宗鑑の書は宗鑑流と称され、県内外に今なお受け伝えられている。その実態把握は十分ではない。筆跡鑑定は難しいが、内容を検討する中で見えてくるものは

 

俳祖・宗鑑 #俳句、川柳

 (一)宗鑑を知る参考文献

(1) 真珠庵開香銭帳 延徳三年七月六日の真珠庵落成式に、宗鑑、宗長、紹芳等が、それぞれ百文を奠した。 京都 真珠庵蔵

(2) 祖師忌奉行帳 明応二年九月、一休十三年忌に先立ち作られた奉行帳に、宗鑑は 膳椀の調達係のような役を勤めた。 京都 真珠庵蔵

(3) 祖師忌帳 一休十三年忌当日に、宗鑑は五百文を奠した。三貫文の宗長の名も見える。 京都 真珠庵蔵

(4) 三十三回忌出納帳 一休三十三回忌に、宗鑑は一貫文を奠し、比丘尼宗心の二百文を取り次いだ。 京都 真珠庵蔵。

(5) 享禄三年八月九日宗鑑が山崎より真珠庵桐春に宛てた書状で十貫文の祠堂銭の代りに三葺幅一対の画を納め、ここもと無事に○者、早々下度」の意向を伝えた。

(6) 真珠庵過去帳 宗鑑は宗鑑庵主として、天文九年(一五四〇)七月二十二日の過去帳に納まっている。 京都真珠庵蔵。

 (二)宗鑑の遺墨(自筆と認められているもの)

(1)宗鑑が編集したものとされている「俳諧連歌」巻頭と巻末  東京 大橋図書館

(2)紫金仙勧進帳 興昌寺釈迦堂建立趣意書 香川県 観音寺市興昌寺蔵

(3)徳寿軒宛書状 切紙をもらった返礼に色紙十枚を進呈しようとする添書き。香川県 観音寺市興昌寺蔵。

 (三)宗鑑自詠句

(1)いやめなる子どもうみをけ郭公  宗鑑  東京 熊坂弥造氏蔵

(2)うづきゝてねぶとに鳴や郭公   宗鑑    伊丹 岡田利兵衛氏蔵 天保十二年古筆了伴極

(3)定家かつらかけてなくきくらん郭公  宗かん 伊丹 岡田利兵衛氏蔵

(4)水の色そらへ流るゝ柳かな    宗鑑  山崎 奥田謙一郎氏蔵 

(5)風寒し破れ障子の神無月     宗鑑  伊丹 岡田利兵衛氏蔵

(6)貸夜ぎの袖をや霜にはし姫御  宗鑑  観音寺 興昌寺蔵

(7)あさみどりはるたつ空のにをひかな  宗鑑  草津 中神コレクション

(8)春の野にいむけむからしのはじまりてまつしくしくしはかりをりける  宗鑑 

   山崎 奥田謙一郎氏蔵  

(8)詠三首和歌 懐紙  宗鑑 京都 熊谷直氏蔵

   嶺上初雪 年ことに先ううちみる実や・・・比良の高ねや庭のはつ雪

   水鳥列舟 わがやどの庭つとりふとみれば・・小舟にち・・みのをし鴨

   古寺夕鐘 夕あらしみねのひびきをまとひきて寺にかねきく志賀の山かぜ

 (四)古典臨書

(1)柿本人麻呂 古今和歌集 巻九

 羈旅  大山崎 観音寺蔵

 ほのぼのあかしの浦の朝きりに

        島隠れ行く舟をしぞおもふ

(2)古今和歌集仮名序  

  岡山県 正宗文庫蔵 正保四年古筆

(3)新古今和歌集 全本 筑波大学蔵 小学館の日本古典文学全集の底本

(4)伊勢物語 巻頭 天理綿屋文庫蔵 寛永十年古筆了佐極

(5)源氏物語初音巻頭

  天理綿屋文庫蔵古筆某極

(6)和漢朗詠集 

  巻上 春梅 春雨 春三月尽 秋雁

  巻下 述懐 雑雲 祝賀 慶賀 中神コレクション

     菊  菊知社日辞巣去

          菊為重陽冒雨開    (秋日東郊)

 わがやどのきくのしら露けふごとにいくよつもりて渕となるらん

           (拾遺集)  

      俳句形式を始めた宗鑑の文学観に迫りたい。