『俳諧二ッ笠』発刊の言葉  

 宗鑑と芭蕉を象徴する反笠と桧笠を指す。その両者を共に大切にする郷土の俳諧誌をここにまとめておきたい。時は令和五年(2023)、宗鑑の来観の享禄元年よりほぼ500年後のことである。芭蕉は四国に渡って来ていないが、それはあまり関係ない。俳祖宗鑑と俳聖芭蕉を共に大切にする俳諧の心は辺境の地郷土讃岐の俳諧の心である。そのほそぼそとした伝統の俳諧精神を保持し、継承していきたい、庶民の心をここに語っておきたい。『俳諧ふたつ笠』は二六庵竹阿が安永4年小西帯河に編集させたもの。宗鑑200回忌にも遭遇。

 現在、一夜庵の屋根の葺き替えが迫っている。富者の万灯より貧者の一灯とも言われるが、どちらも心がこもっていれば、それだけで有り難い。閑雅を愛した俳諧師に金銭感覚はほとんどない。ただ有り難く頂くことしか知らない風流人である。雨露を凌ぐに足る庵さえあれば、十分。現在のような部厚い茅葺屋根ではなかったと考えられる。とはいえ、戦中戦後のように小麦藁を葺いていたはずもない。何度も何度も荒廃し、廃れた一夜庵、それでも、原形を留めるような茶室的草庵を守って、今回も修復に努めている。心ある人のご協力を念じている。俳諧の里、香川県西讃の田舎町にあって、欲得を離れ、閑雅な俳諧文学を楽しみ、連歌連句俳諧・俳句に興味と関心の多少でもあるものたちの心のよりどころとして【一夜庵】が存続していくことを願ってやまない。