靑き蜜柑

 行く秋のなほ頼もしや青蜜柑  芭蕉

 
        青き蜜柑     森川義信

 愁ひ来て丘にのぼりて
 酸の香る蜜柑もぐなり
   悲しみの青き蜜柑を

栗林こえて見ゆるは
背きにし君の町なるぞ
ゆふぐれに深く沈みて

 掌にしみる青き蜜柑よ
 そをかみて何を思はむ
 昔の日は皆空しきに

ああされど君も寂しと
この丘の青き蜜柑の
その香りなぜか愛でたり

 自ら影をふみつつ
 ゆふぐれの丘を下りき
 掌に悲し青き蜜柑よ