」森川義信「青き蜜柑」

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『森川義信詩集』に載せられた森川義信の代表詩(作曲され香川県国民文化祭開会式に合唱される)
 [森川義信略歴]
大正七年十月十一日 香川県三豊郡栗井村本庄二二五四にて出生
昭和五年香川県立三豊中学入学 昭和十二年 同校卒
昭和十二年 早稲田第二高等学院英文科入学 十四年十二月同校中退
詩作は中学時代から、鈴木しのぶの筆名で『若草』『臘人形』に投稿。
『LUNA』(後にLEBAL)に入ってから筆名を山川章と改める。
早稲田に入ってから、『裸群』『早稲田派』『荒地』等に詩を発表。
『衢』あたりから本名の森川義信で書く。第二学院中退後、故郷に帰ったが、
昭和十五年春に半月ほど上京。昭和十六年四月 丸亀歩兵連隊に入隊。
昭和十七年八月十三日 ビルマのミートキーナで戦病死。数え年二十五歳。

   青き蜜柑     森川義信

 愁ひ来て丘にのぼりて
 酸(す)の香る蜜柑もぐなり
 悲しみの青き蜜柑を

 栗林(くりばやし)こえて見ゆるは
 背きにし君の町なるぞ
  ゆふぐれに深く沈みて

 掌(て)にしみる青き蜜柑よ
 そをかみて何を思はむ
 昔(かみ)の日は皆空しきに

 ああされど君も寂しと
 この丘の青き蜜柑の
 その香りなぜか愛でたり

 自ら影をふみつつ
 ゆふぐれの丘を下りき
 掌に悲し青き蜜柑よ

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