入選の決め手「寒紅梅の蕊」

  和菓子屋をなりはひとして五十年  寒紅梅の蕊をさす朝  岩倉由枝

上の句「和菓子屋」を「なりはひ」(=生業、これは古語で旧仮名遣い)がよかった。下の句「寒紅梅の蕊」「さす」言葉選び、この神経の繊細さが光っている。きりっとひきしまって、冴え冴えとして凛冽さがにじみ出ている。構成ししては、上の句と下の句が対比的で、すっきりしている。上の句のたどってきた「自分史のまとめ」とその象徴として、下の句の「鮮やかなワンシーン」がマッチして、快く享受される秀歌となっている。