「もろだ」とはネズの木

 
 
 讃岐で「もろだ」と呼ぶ木はネズ(ネズミサシ)、万葉名「室(むろ)の木」のことである。
なかなか大きくならないが、材質が細かく堅いので、何かと用具に使われる。はで杭、おうこ、鍬の柄、そして木の鳥居にまで。しかし、今ではこの木は容易に見当たらないし、用途自身が少なくなっている。若い人などにはほとんど知られていないのが「もろだ」である。広島では「もろた」「もろほ」「もろすぎ」「むろき」「むろぎ」などいろいろ呼ばれている。『万葉集』で大伴旅人鞆の浦(福山市)で詠んだ歌で有名になっている。
 なお、園芸で「杜松(としょう)」と呼ぶのもこのネズのことである。
 
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 天平二年庚午冬十二月太宰帥大伴の卿の京に向きて上道する時によみたまへる歌五首
  我妹子が見し鞆之浦の天木香樹(むろのき)は常世にあれど見し人ぞなき(446)鞆之浦の磯の杜松(むろのき)見むごとに相見し妹は忘らえめやも(447)
  磯の上に根延ふ室の木見し人をいかなりと問はば語り告げむか(448)
ー右ノ三首ハ、鞆浦ヲ過ル日ニ作メル歌。