平成万葉歌仙(九)「棚なし小舟」の巻

   平成万葉歌仙(九)「棚なし小舟」の巻   両吟 不遜(捌) 宣長

        起首 二〇〇八年九月十八日
        満尾 二〇〇八年十月 四日

 いづくにか船泊(は)てすらむ安礼の崎漕ぎたみ行きし棚なし小舟(高市黒人

  発句  秋風に棚なし小舟漕ぎゆけり    宣長 秋
  脇    名は黒人ぞ赤蜻蛉舞う       不遜 秋
  第三  昨日見た秋月現の証拠にて    宣 秋月
  四   あたり一面大文字草        不 秋
  五  青年は荒野をめざすスピリット     宣 雑
  六   アムール河は凍てつくばかり    不 冬
   ウ
  一  斧振れば雪の原野に木魂して    宣 冬
  二   滅びし国の古銭ザクザク        不 雑
  三  ひとひらの愛の言葉も伝わらず    宣 恋
  四   かかる切なき思いの果てを     不 恋
  五  見せかけの団欒中に愛育つ     宣 恋
  六    巷に流るゴンドラの唄          不 雑
  七  夢ちぎれ後ろ姿のしぐれたり      宣 冬
  八   寒空遠く一片の月            不 冬月
  九  往路帰路旅はリターンぞ頼もしき 宣 雑
  十   末広がりの凱旋八首           不 雑
  十一 春殿の宮女に花の芳しき      宣 春花
  十二  天平勝宝二年の弥生         不 春
   ナオ
  一  古の都の春をまなうらに        不 春
  二   人麻呂凌ぐ黒人の歌         宣 雑
  三  小泉も王も引退淋しいぞ         不 雑
  四   何でもしてみる晩年美学        宣 雑
  五  この夏の流行気配謀(にせ)綸旨  不 夏
  六   魑魅魍魎を鵺が連れ来し       宣 夏
  七  小野洋子レノンのラブを回想す   不 恋
  八   教科書の人嘗め回す娘も       宣 恋
  九  国会は世襲政治家ばかりなり    不 雑 
  十   巣立てば独り輝ける鳥         宣 雑
  十一 さざ浪や琵琶湖湖畔の真夜の月 不 秋月
  十二  ヰ゛オロンの音に似たる秋風    宣 秋
   ナウ
  一  寝ころんで「幸(さいはひ)」棲むとそっと言う 宣 雑
  二   ウォール街は存亡の危機        不 雑 
  三  癒ゆる日のなき狭庭辺に種蒔かせ  宣 雑
  四   根岸の春を団子食いつつ        不 春
  五  青春も老春もまた花の園                宣 春花
  六   呼子鳥鳴き直ぐ夏隣           不 春