U子が連翹の島10首

   U子が連翹の島10首

何事もなくて生きたる人の世になきにしもあらず合縁奇縁

何故か知らねどU子が彼の島へ行きたいと言う泊まり込みにて

小説のヒロインU子現在の或は過去の女人U子

観光の明るい島はオリーブにて密やかなるは連翹の花

寒霞渓その山深くひそやかに千古の愛の自生する花

ふと触れることさえなくて咲きて散る孤愁に堪えて生きてきたりぬ

長浜はロングビーチと言い換えて父母ヶ浜はU子の渚

現実は老醜という避けられぬ定めがあれど唯美幻想

幻の消えざる命時経ても褪せることなき至純なる愛

闇雲に恋い焦がれてもなす術もなく人の身の宿世は哀し