松浦坐石、西讃俳枕20句

余岐岬晩霞  黄昏や雲か霞か崎の松

花稲浦落雁  浦広し天にも落る雁の数

琴弾山松籟  春なれや終日絶えぬ松の琴

有明浜斉月  月清し砂に匍匐ふ松の影

琴弾公園   琴弾や全山色をかへぬ松

同園夜桜   夜桜や自動車の人何者ぞ

琴柱蛙声   琴を弾く松に合すか鳴く蛙

一夜庵虫声  虫鳴や千古に伝ふ一夜庵

三架橋納涼  笛の音は画舫や橋の涼一味

染川調布   布さらす水にもさびて落る鮎

塩山晴嵐   青嵐山をはなれて旭の匂ふ

高屋春暁   暁や桃李艶雲村五百

稲積山霜葉  露霜の高根は早き紅葉かな

九十九山驟雨 白雨の洗ふて青し九十九山

仮屋浦帰帆  帰る帆を逐ひつつ来たり燕

天満宮霊松  相公の御手植松や色かへず

平石夕陽   船に琴移すや永き日も落て

筥崎朝靄   夏深し岬をのかぬ朝の靄

燧灘漁火   漁火の多くて淋し秋の海

国市池群鴨  鴨下りる池に声ある夜半かな 

 ★昭和15年刊松尾明徳編『一夜庵俳誌』による(限定、香川県三豊郡内)