ざらしを心に風のしむ身哉 芭蕉

  高く悟りて俗に返るべし  雅舟

 

とせて江戸を古郷  芭蕉 

  伊賀も上野も慕はし花野  雅舟

  

霧しぐれ富士をみぬ日ぞ面白 芭蕉

  無限大なる心象風景     雅舟

  

猿を聞人捨子に秋の風いかに 芭蕉

  すべなき不運天命と泣け   雅舟 

 

道のべの木槿は馬に食はれけり  芭蕉

  馬酔木ならねば心配不要   雅舟

  

馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり 芭蕉

  西行の古歌小夜の中山       雅舟            

    

三十日月なし千年の杉を抱嵐    芭蕉

  僧とみなされ入れぬ内宮   雅舟

 

洗ふ西行ならば歌詠まむ    芭蕉

  秋陽に晒す眩しきかひな   雅舟

   

やてふのにたき物す  芭蕉

  余香を頂き生きるも余慶   雅舟

 

蔦植て竹四五本のあらし哉   芭蕉

  閑人訪問挨拶の吟      雅舟

 

手にとらばん涙ぞあつき秋の霜 芭蕉

  母の遺髪を見せられし朝    雅舟

                                                             

わた弓や琵琶になぐさむ竹のおく 芭蕉

  貧しき山家もてなしの音    雅舟

 

朝顔幾死かへるの松     芭蕉

  千歳の松に仏法賛嘆      雅舟

 

碪打て我にきかせよや坊が妻   芭蕉

 風雅隠士へついでのサービス  雅舟

 

露とくとく試みに浮世すゝがばや   芭蕉

  清廉に生きし古詩人歌人    雅舟

 

御廟年経ては何をしのぶ草   芭蕉

  吉野南朝後醍醐天皇      雅舟 

 

義朝の心に似たり秋の風           芭蕉

 殺戮非業愁殺哀史        雅舟

 

秋風や不破の関     芭蕉

  佇み居れば蘇る史話      雅舟

 

死にもせぬ旅寝よ秋の暮      芭蕉

  野ざらし覚悟まだ続く夢     雅舟

 

冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす   芭蕉

 夏の物冬に転じる面白さ     雅舟

  

明けぼのや白魚白きこと一寸   芭蕉

 しらじらしろくかすみゆく川    雅舟

 

しのぶさへて餅買ふやどり哉   芭蕉

 和歌には詠まれぬ食べ物登場  雅舟

  

狂句木枯の身は竹斎に似たる哉   芭蕉

 藪医者にして狂歌の才士    雅舟

 

草枕犬も時雨るかよるのこゑ   芭蕉

 比叡の山の冷ゆる独り寝   雅舟

 

市人笠売らう雪の傘  芭蕉

 お道化て言うて楽しむ若衆  雅舟

 

馬をさへながむる雪の哉   芭蕉

 木の葉に炭を吹起すは鉢   閑水 

 

海暮れて鴨の声ほのかに白し 芭蕉 

 串に鯨をあぶる盃        桐葉 

  

ぬ笠きて草鞋はきながら  芭蕉

 足軽々と明年も旅        雅舟

 

歯朶に餅おふ丑の年  芭蕉

 年礼にゆく吾妻の実家      雅舟

 

春なれや名もなき山の薄霞   芭蕉

 をちこち鶯声整はず      雅舟

 

水とりや氷の僧のの音    芭蕉

 二月堂には聖俗参入     雅舟

 

梅白し昨日や鶴をれし    芭蕉

 和靖の飄逸秋風の隠逸    雅舟

 

の木の花にかまはぬ姿かな  芭蕉

 凛として生きる朴訥の夫     雅舟  

       

我がきぬに伏見の桃の    芭蕉

 磊落な僧の傘寿の祝      雅舟

 

山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉

 春なほ寒き志賀峠路      雅舟

 

辛崎の松は花よりにて    芭蕉

 言ひさして妙小町もおぼろ  雅舟

 

命二つの中に生たる桜哉    芭蕉

 土芳と出遇二十年目に    雅舟

 

いざともに穂麦食はん草枕   芭蕉

 野鳥の群には声かけもせず  雅舟

 

梅恋ひて卯花拝む涙哉     芭蕉

 遷化和尚の余徳春風     雅舟

 

げしにはねもぐの形見哉 芭蕉

 杜国に贈る留別の吟      雅舟 

 

牡丹ふかく分出る蜂の名残哉 芭蕉

 富貴草籠め惜別の情     雅舟

 

行駒の麦に慰むやどり哉    芭蕉

 今宵夕餉に供さるるもの   雅舟

           

夏衣いまだをとりつくさず   芭蕉

 漢詩文では隠士の遊び    雅舟