高く悟りて俗に返るべし 雅舟
秋
伊賀も上野も慕はし花野 雅舟
霧しぐれ富士をみぬ日ぞ
無限大なる心象風景 雅舟
猿を
すべなき不運天命と泣け 雅舟
馬酔木ならねば心配不要 雅舟
馬に寝て
西行の古歌小夜の中山 雅舟
僧とみなされ入れぬ内宮 雅舟
秋陽に晒す眩しきかひな 雅舟
余香を頂き生きるも余慶 雅舟
閑人訪問挨拶の吟 雅舟
手にとらば
母の遺髪を見せられし朝 雅舟
わた弓や
貧しき山家もてなしの音 雅舟
千歳の松に仏法賛嘆 雅舟
風雅隠士へついでのサービス 雅舟
露とくとく試みに浮世すゝがばや 芭蕉
清廉に生きし古詩人歌人 雅舟
殺戮非業愁殺哀史 雅舟
秋風や
佇み居れば蘇る史話 雅舟
死にもせぬ
野ざらし覚悟まだ続く夢 雅舟
冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす 芭蕉
夏の物冬に転じる面白さ 雅舟
明けぼのや白魚白きこと一寸 芭蕉
しらじらしろくかすみゆく川 雅舟
しのぶさへ
和歌には詠まれぬ食べ物登場 雅舟
狂句
藪医者にして狂歌の才士 雅舟
比叡の山の冷ゆる独り寝 雅舟
お道化て言うて楽しむ若衆 雅舟
馬をさへながむる雪の
木の葉に炭を吹起すは鉢 閑水
海暮れて鴨の声ほのかに白し 芭蕉
串に鯨をあぶる盃 桐葉
年
足軽々と明年も旅 雅舟
年礼にゆく吾妻の実家 雅舟
春なれや名もなき山の薄霞 芭蕉
をちこち鶯声整はず 雅舟
水とりや氷の僧の
二月堂には聖俗参入 雅舟
梅白し
和靖の飄逸秋風の隠逸 雅舟
凛として生きる朴訥の夫 雅舟
我がきぬに伏見の桃の
磊落な僧の傘寿の祝 雅舟
山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
春なほ寒き志賀峠路 雅舟
言ひさして妙小町もおぼろ 雅舟
命二つの中に生たる桜哉 芭蕉
土芳と出遇二十年目に 雅舟
野鳥の群には声かけもせず 雅舟
梅恋ひて
遷化和尚の余徳春風 雅舟
杜国に贈る留別の吟 雅舟
富貴草籠め惜別の情 雅舟
今宵夕餉に供さるるもの 雅舟
夏衣いまだ
漢詩文では隠士の遊び 雅舟