名詩「勾配」の、現代に問いかけるもの

  1. 戦後の現代詩「荒地」のさきがけとも言われる詩 
  2.     勾 配     森川義信
  3.  非望のきはみ
  4.  非望のいのち
  5.  はげしく一つのものに向かって
  6.  誰がこの階段をおりていったのか
  7.  時空をこえて屹立する地平をのぞんで 
  8.  そこに立てば 
  9.  かきむしるように悲風はつんざき 
  10.  季節はすでに終わりであった
  11.  たかだかと欲望の精神に 
  12.  【はたして時は】
  13.  噴水や花を象嵌
  14.  光彩の地平をもちあげたか 
  15.  【清純なものばかりを打ちくだいて】 
  16.  【なにゆゑにここまで来たのか】
  17.  【だがみよ】
  18.  【きびしく勾配に根をささへ】 
  19.  ふとした流れの凹みから雑草のかげから
  20.  【いくつもの道ははじまってゐるのだ】

親友鮎川信夫の絶賛したことばを紹介しなければならない。

「わずか十八行の短詩だが、さっと一読しただけで、私は、目がくらむような思いがした。何度も繰り返して読んだが、感動の波は高まるばかりであった。」これはこの詩を原稿で初めて読んだ鮎川信夫の感想であった。

私見【  】で包んだ六行がこの詩の骨子である。