森川義信「勾配」を書く

 

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f:id:gashuu:20200731145132j:plain高等学校現代文(筑摩書房)『演習国語Ⅱ』では、森川義信の代表作「勾配」が載せられている。  〔参照〕  詩人・鮎川信夫「死んだ男」   

   勾配  森川義信
  非望のきはみ
  非望のいのち
  はげしく一つのものに向かって
  誰がこの階段をおりていったのか
  時空をこえて屹立する地平をのぞんで
  そこに立てば
  かきむしるように悲風はつんざき
  季節はすでに終わりであった
  たかだかと欲望の精神に
  はたして時は
  噴水や花を象眼
  光彩の地平をもちあげたか
  清純なものばかりを打ちくだいて
  なにゆゑにここまで来たのか
  だがみよ
  きびしく勾配に根をささへ
  ふとした流れの凹みから雑草のかげから
  いくつもの道ははじまってゐるのだ

〔余説〕この作品の生まれた頃、時代は太平洋戦争の始まる気運があった。

在京在学中に生まれた死で、親友鮎川信夫ほか「荒地」仲間に高く評価されていた。

やがて、森川は退学、帰郷〔郷里香川)、徴兵でビルマに出兵〔真珠湾攻撃を知るのはその途中ベトナム付近)その後ミートキーナで戦病死。戦後『森川義信詩集』を鮎川が身代わりに出版。