生と死のはざま

かげろふの夕を待たず夏の蝉の春秋を知らぬのもある

つくづくと一年を暮らす程だにもこよなうのどけしや

飽かず惜しと思わば千年を過すとも一夜の夢の心地する

住みはてぬ世に醜きすがたを待ちえて何かはせん

欲深くあさましい姿さらけだし何になる命長ければ辱多し

長くとも四十に足らぬほどにて死なんぞ目安かる

そのほど過ぎぬればかたちを恥づる心もなくなりぬ

のけものにされたくなくて世の人に出で交わらんと思う

いつまでも子孫を愛し栄えゆく末まで見ようとする

ひたすら世を貪る心のみ深く物のあわれも知らずなりゆく