あだし野の露と消えゆき鳥辺山の烟と果てゆくぞもののあはれ
命あるものを見るのに人ばかり久しきものはなしとぞ
かげろふの夕を待たず夏の蝉春秋を知らぬそれもまたよし
この世をば惜しと思はば千年も一夜の夢の心地するらむ
住み果てぬ世に己が醜き姿を保ちえて何かせん
徒に【命長ければ辱多し】生き恥をかかぬが潔きものを
【長くとも四十に足らぬにて死ぬ】ぞめやすかるべし
とは言ひながらご自身は七十歳まで生きるしたたかさ
夕の陽に子孫を愛して栄えゆく末を見るぞあさましき
子や孫の自慢する爺婆蔓延
ひたすらに世を貪らむとする心もののあはれを知らざる心
● 命に執着せず恬淡と生きるべし