兼好の生命観(10首歌)

あだし野の露と消えゆき鳥辺山の烟と果てゆくぞもののあはれ

命あるものを見るのに人ばかり久しきものはなしとぞ

かげろふの夕を待たず夏の蝉春秋を知らぬそれもまたよし

この世をば惜しと思はば千年も一夜の夢の心地するらむ

住み果てぬ世に己が醜き姿を保ちえて何かせん

徒に【命長ければ辱多し】生き恥をかかぬが潔きものを

【長くとも四十に足らぬにて死ぬ】ぞめやすかるべし

とは言ひながらご自身は七十歳まで生きるしたたかさ

夕の陽に子孫を愛して栄えゆく末を見るぞあさましき       

        子や孫の自慢する爺婆蔓延

ひたすらに世を貪らむとする心もののあはれを知らざる心

            ● 命に執着せず恬淡と生きるべし

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