各務支考の魔力

『俳聖芭蕉と俳魔支考』堀切実
 
 芭蕉が俳聖と呼ばれるのは一般的であろうが、芭蕉を広めた支考を俳魔と呼ばれることには違和感を覚えるのではなかろうか。ただ、この「魔」は悪い意味ではなく、驚嘆するような魔力の意味であるとするならば、納得されるかもしれない。
 本書のねらいは、この「俳聖」芭蕉と「俳魔」支考とを対極的にとらえようとしている面と両者の共通面をとらえようとしている面がある。師芭蕉から何を学び、何を受け継いでいったかを検証するのが本書を読む楽しみである。支考は弁舌指導の才をもって俳壇経営法は次の三点にしぼられる。「イベント商法」「セールスマン商法」「アイディア商法」
 支考の西国行脚は、果たせなかった師の代わりになしたとも言える。本書第5章「行脚の競演ー遊行遍歴者としてのふたり」では、芭蕉・支考〈芭蕉没後〉の行脚足跡図を見ると、それが見て取れる。