~紅葉と黄葉~
現在我々が普通「紅葉」と書くところを、万葉集ではほとんど「黄葉」という表記をしている。東北のような寒冷地帯は山紅葉は紅く、大和近畿一帯は黄葉が多いとも言われるが、それも断言はできまい。楓・桜・櫨など大方は雑木紅葉というのが自然であろう。
萩黄葉・銀杏黄葉などは少数派ではなかろうか。
木の種類によって黄葉・紅葉は感覚的に使い分けられるし、たとえそうだとしても絶対ではなく、その時の雰囲気、時の流れでも流動的であるかと思う。厳密に区別して書き分けているのではない。
万葉集では「黄葉」が圧倒的多く、200首くらいに出てくる。「紅葉」「赤葉」「赤」が1首ずつ出てくるだけである。その他はすべて「黄葉」となっている。
源氏物語の巻七は「紅葉賀」となっている。平安朝宮廷文学の典雅な場面では、華やかな「紅葉」の色彩でないと似合わない。