惜春譜10首


      惜春譜 10首

   連翹の島と名付けて幾年ぞその歌声は人に届かず

   オリーブは青き音符の実を揺らせ結ばれ難き愛の譜を練る

   風となり君を問はんかさてはまた矢車草のみ吹きて過ぎんか

   脆弱の世を射るごとくフェニックスは鋭き葉先虚空に曝す

   近寄らば毒を刺さんと身構へるフェニックスの倨傲を愛す

   初めての担任生徒巣立ちゆく一一四の輝く瞳

   炎天下交通事故で死なしめし若者の母想ひ出づる日

   六千万年宇宙さまよひ落ち来たる隕石のごとく君を想はん

   老春といふべき中に生きてをり文学青年の矜持を捨てず

   迷ひ道寄り道脇道道草をふんだんにして風香る道

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