西行讃岐(10首歌)

 西行崇徳上皇の白峰御陵参拝と空海出生の善通寺参詣を兼ねて

 仁安二年~三年讃岐に渡って来ている。その時の歌『山家集』掲載歌

松山の波に流れて来し舟のやがて空しくなりにけるかな

松山の波の景色は変らじを形無く君はなりましにけり

よしや君玉の床とてもかからん後は何にかはせむ

廻り逢はん事の契りぞ有り難き厳しき山の誓ひ見るにも

筆の山にかき登りても見つるかな苔の下なる岩の気色を

折しもあれ嬉しく雪の埋むかなかき籠りなんとおもふ山路を

曇りなき山にて海の月見れば島ぞ氷の絶え間なりける

ここをまた住み憂くて浮かれなば松は独りにならんとすらん

久に経て我が後の世を問へよ松跡忍ぶべき人もなき身ぞ

敷き渡す月の氷を疑ひてひびの手まはる味鴨の群鳥