戦後の現代詩「荒地」のさきがけとも言われる詩
勾 配 森川義信
非望のきはみ
非望のいのち
はげしく一つのものに向かって
誰がこの階段をおりていったのか
時空をこえて屹立する地平をのぞんで
そこに立てば
かきむしるように悲風はつんざき
季節はすでに終わりであった
たかだかと欲望の精神に
【はたして時は】
噴水や花を象嵌し
光彩の地平をもちあげたか
【清純なものばかりを打ちくだいて】
【なにゆゑにここまで来たのか】
【だがみよ】
【きびしく勾配に根をささへ】
ふとした流れの凹みから雑草のかげから
【いくつもの道ははじまってゐるのだ】
親友鮎川信夫の絶賛したことばを紹介しなければならない。
「わずか十八行の短詩だが、さっと一読しただけで、私は、目がくらむような思いがした。何度も繰り返して読んだが、感動の波は高まるばかりであった。」これはこの詩を原稿で初めて読んだ鮎川信夫の感想であった。
☆私見【 】で包んだ六行がこの詩の骨子である。