芭蕉の「一夜」句

 萩原や一夜は宿せ山の犬 芭蕉

『続虚栗』に所収されている。貞享4年作。この萩の原に今宵一夜は私たちも野宿させてくれ、山犬たちよ、の意。古来旅する者にとって「一夜の宿」は求められる大切なものであった。謡曲「鉢の木」「元日やさらに旅宿とおもほへず 一茶」歓待される有り難さ。宗鑑だけは「上は立ち中は日暮らし下は夜まで一夜泊りは下下の下の客」と泊り客を厄介扱いした歌を残している。これは諧謔Ironyと見るべき逆説歌。

 心優しい芭蕉・人情家一茶とつっけんどんを装った一夜庵宗鑑との落差がおもしろい。