郷土喪失の作家高橋和己

 少年時代、大阪大空襲で焼け出され、父母の出身地香川県疎開、そこで文学に目覚める。友人宅の世界・日本文学全集読破が作家和己を生む素地となる。これまでここに注目した人は少ない。中一からわずか一年半の異郷での生活が、一生を決めたとは言えまいし、苦い体験を味わって、全く作品化することはなかった。

 高橋和己、この郷土喪失の作家の幻影を追いながら、同郷作家先輩を敬慕して虚しく逍遥している小生である。

後列左端が和己(中学一年生)

母、高橋慶子