生命頌歌としての森川義信「勾配」

    森川義信の詩をめぐって    

     現代詩における生命頌歌の再発掘     

 

森川義信詩集』はまさに森川の墓標である。その数多からぬ作品は、戦争の影とともに成長し、ついにはその雲の上に消え去る運命を確実に予測した若者の、冷たく暗いけれども、痛いほど美しい生命の讃歌である。戦中、戦後を通じて、森川の詩に匹敵する痛切を保有した生命頌歌があっただろうか?

「Mよ」という呼びかけのある鮎川の詩、「死んだ男」や「アメリカ」を代表例にしてもいい。早い時期の戦後詩の生命頌歌は、失われた死者の生命に対する哀悼の形をとった。   (衣更着信  著 『荒地』の周辺)

 戦死した親友森川義信の死を悼んで自らを「遺言執行人」と名付けた鮎川信夫

「死んだ男」の復活を願ってか、名詩「死んだ男」を生んだ。死に後れた戦後詩人へ

友への「墓標」であると同時に永遠の金字塔と言えるかもしれない。