牧野富太郎と鹿持雅澄

 ✿ 葵は冬葵ではなく普通のアオイそのもの

 私は進んでわが郷国の歌学者で『万葉集古義』の著者である鹿持雅澄先生の蜀葵説に左袒し、かつその所説を支持することを辞さない。それは確信をもつ私の従来からの見解と一致するからである。(中略)アオイは元来葵、すなわち冬葵の和名ではあれども、民間で俗に昔からアオイと呼んでいるものは、今日でもなおやはり昔のとなえをそのまま続けている蜀葵のアオイそのものである。 『牧野富太郎選集2』万葉の草木

 梨棗黍に粟次ぎ延ふ葛の後も逢はむと葵(あふひ)花咲く (『万葉集』巻16ー3834)

 ‹蛇足›『万葉集古義』の著者鹿持雅澄に因んで小生の筆名・剣持雅澄、本名・野口雅澄