2021-08-17 通俗的結婚を痛罵(兼好『徒然草』) 妻といふものこそ、男の持つまじきものなれ。「いつも独り住みにて」など聞くこそ、心にくけれ、「誰がしが婿に成りぬ」とも、また、「如何なる女を取り据ゑて、相住む」など聞きつれば、無下に心劣りせらるゝわざなり。殊なる事なき女をよしと思ひ定めてこそ添ひゐたらめと、苟しくも推し測られ、よき女ならば、らうたくしてぞ、あが仏と守りゐたらむ。たとへば、さばかりにこそと覚えぬべし。まして、家の内を行ひ治めたる女、いと口惜し。子など出で来て、かしづき愛したる、心憂し。男なくなりて後、尼になりて年寄りたるありさま、亡き跡まであさまし。(『徒然草』190段) ⋯⋯恋愛情調を重んじる立場から、それに障害となるものの一切を痛罵していて快い。 四六時中同居する嫁取り婚の夫婦生活のもとで、男女相互の純粋な愛情が不純化されることへの警告である。