官能俳句『鈴木しづ子100句』の中の20句抄

◎春雪の不貞の面て擲ち給へ

◎冬の月少女花うり店しまふ

◎夫ならぬひとによりそふ青嵐

◎秋ゆふべねじ切るわざを見てならふ

◎あきのあめ襟の黒子をいはれけり

◎湯の中に乳房いとしく秋の夜

◎しぐるるや掌をかさねおく膝の上

◎欲るこころ手袋の指器に触るる

◎実石榴のかつと割れたる情痴かな

◎秘め箱に紐かけておく椿かな

◎まぐはひのしづかなるあめ居とりまく

◎裸か未股の血脈うをく引き

◎情慾や乱雲とみにかたち変へ

◎葉の蔭にはづす耳環や汗ばみて

◎熱哀し蒲団のそとに置く片手

◎一葉の死せし歳過ぐ冷やこき手

◎わが五指がさくらはなびら散らしけり

◎天の河つねに悲恋は姉娘

◎風鈴や枕に伏してしくしく涕く

◎娼婦またよきか熟れたる柿食うぶ

◎裸か身や股の血脈あをく引き

◎寒菊や荒るることなき素顔の膚

◎早梅や人より多き希ひごと

◎吹く息が菊はなびらの塵たたす

◎春ひかり豆腐横たふ皿の上