◎春雪の不貞の面て擲ち給へ
◎冬の月少女花うり店しまふ
◎夫ならぬひとによりそふ青嵐
◎秋ゆふべねじ切るわざを見てならふ
◎あきのあめ襟の黒子をいはれけり
◎湯の中に乳房いとしく秋の夜
◎しぐるるや掌をかさねおく膝の上
◎欲るこころ手袋の指器に触るる
◎実石榴のかつと割れたる情痴かな
◎秘め箱に紐かけておく椿かな
◎まぐはひのしづかなるあめ居とりまく
◎裸か未股の血脈うをく引き
◎情慾や乱雲とみにかたち変へ
◎葉の蔭にはづす耳環や汗ばみて
◎熱哀し蒲団のそとに置く片手
◎一葉の死せし歳過ぐ冷やこき手
◎わが五指がさくらはなびら散らしけり
◎天の河つねに悲恋は姉娘
◎風鈴や枕に伏してしくしく涕く
◎娼婦またよきか熟れたる柿食うぶ
◎裸か身や股の血脈あをく引き
◎寒菊や荒るることなき素顔の膚
◎早梅や人より多き希ひごと
◎吹く息が菊はなびらの塵たたす
◎春ひかり豆腐横たふ皿の上