旗となるわが明日なれよ芽ぐむ木にかがみて靴を磨きいるとも 寺山修司
春芽ふく樹林の枝々くぐりゆき我は愛する言ひ訳をせず 中城ふみ子
もろ芽たつ窓あけて吾がなげかふとあたたかき夜を立てる月しろ 小暮政次
木の芽立ゆたけき庭のひとところ孟宗の藪おとろへむとす 柴生田稔
曙のもののしめりの深ければ芽ぶける木々の立ちて静けさ 若山牧水
落葉松の萌黄の芽ぶきけぶりつつ日はたけなはとなりにけるかも 島木赤彦
沙羅双樹芽ぶかむとする山のうへに一日を居りていにしへおもほゆ 斎藤茂吉
飛火野はまだふる年の雪間より芽ぐむ若菜ぞ春急ぎける 藤原定家
朝日射す峰の続きは芽ぐめどもまだ霜ふかし谷の陰草 崇徳院
霞たち木の芽もはるの雪ふれば花なき里も花ぞ散りける 紀貫之